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はじめに――連載のねらい
医療の高度化,複雑化に伴い医療の質の確保や医療安全体制の確立を望む声が一層高まっている。さらに患者の高齢化,平均在院日数の短縮など,医療を取り巻く環境は大きく変化しつつある。そのような状況下にあっては,新人看護職者であっても,入職段階から高いレベルの看護実践能力が求められている。しかし,実践能力を培うための臨地実習では,学生に国家資格がないこと,ならびに医療安全や患者の人権尊重の観点から,実習範囲が制限されがちである。また具体的な看護技術に関する教育内容や臨地実習の到達目標についても,看護系大学・養成所によって異なっていることが多い。
一方,新卒者のリアリティショックや職場への適応障害も問題となっている。最近では,一般誌にも「仕事が怖い新卒看護師」というテーマで新人看護師問題が取り挙げられるようになった1)。
わが国では医師,看護職者ともに常に不足している。それに加えてこのような状況があるなかでは,医師,看護職者の量的不足だけでなく,その資質的向上を図ることも,喫緊の課題となっている。
1991(平成3)年には11大学に過ぎなかった看護系大学は2006(平成18)年現在では144校にもなった。看護系大学の入学定員は,全看護師養成数の約2割にのぼり,大卒者は年々増えている。であればこそ,看護職者の資質は一般的に向上しているはずであるが,現実には実践的能力不足を訴える声は後を立たない。これを受けて,わが国では新人看護職者の看護実践能力不足についてさまざまな検討会や調査研究がなされてきた。まず本稿ではそれらの概要について述べたい。さらに本連載では,筆者らの行なった基礎研究の成果報告書である「看護系大学卒業後1年間の新人看護職者の看護実践能力を育成する教育システムの開発」の研究内容を紹介する。次号から分担研究者に順次解説していただき,連載を通じて,新人看護職者の実践能力向上に寄与することをねらいとしたい。
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