連載 事例と判例で考える病院の看護水準と事故防止・12
口頭指示による事故
中村 春菜
1
1東京海上日動メディカルサービス(株)メディカルリスクマネジメント室
pp.1036-1041
発行日 2005年12月10日
Published Date 2005/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100286
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はじめに
医療現場ではさまざまなコミュニケーションがとられているが,そのなかでも医師・看護師間のコミュニケーションは,治療内容の指示に関することなど,複雑かつ重要なものが多い。本来,医師の指示内容はカルテや処方箋,指示書などに,医師によって記載(入力)されるべきである。しかし口頭指示の場合,医師の言葉だけから指示内容を聞き取るため,伝達の時点で言い間違い,聞き間違いや思い違いが起こる危険性がある。指示内容が複雑であったり,また急ぐ状況でのやり取りでは,その危険性はさらに高まる。そのため,口頭指示は原則禁止としている病院が多いが,現実には,緊急時や夜間には口頭指示が行なわれている。特に薬剤投与の口頭指示では,指示を受けた看護師がすぐに調剤し患者へ投与することが多く,薬剤師の鑑査が入らないため,最終実施者である看護師の責任はより重大になる。以前,カリウム製剤や10%キシロカインの急速静注により患者が死亡する事故が相次いだが,これらの多くが,口頭指示によるものであった。
今回は,薬剤の口頭指示による事故の事例を通して,口頭指示の危険性や口頭指示を行なう際の注意点などについて考察する。
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