連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・8
心の成長 別れの受容 『だいじょうぶだよ,ゾウさん』
柳田 邦男
1
1作家
pp.1034-1035
発行日 2005年12月10日
Published Date 2005/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100285
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ここで取り上げる絵本『だいじょうぶだよ,ゾウさん』の作者ローレンス・ブルギニョンさんのことを,まず紹介しておきたいと思う。ローレンスさんは,ベルギーの出版社に勤める女性の編集者兼作家だ。彼女は幼い頃,やさしい祖母が大好きだった。ある日,祖母は自分がやがて死んであの世に行かなければならないのだと言った。死ぬなんて,少女には思っただけで恐ろしいことだったから,「死んじゃいや」と言って泣いた。すると祖母は,「それはローレンスをあの世から見守るためで,その時までにはまだゆっくりと時間はあるのよ」と言って,安心させてくれた。
やがてローレンスさんはおとなになり,結婚して男の子を育てるようになった。年老いて病いに伏すようになった祖母がいよいよ死への旅立ちが近いことを話しても,心が成長したローレンスさんはショックを受けることもなく,祖母をやさしくケアして,あの世に見送ったという。
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