特集 医療安全と質を保証する患者状態適応型パス統合化システムの開発と実際
患者状態適応型パスシステムに込めた医療質マネジメントの思想
飯塚 悦功
1
,
水流 聡子
2
,
棟近 雅彦
3
1東京大学大学院工学系
2東京大学大学院
3早稲田大学理工学術院
pp.886-891
発行日 2005年11月10日
Published Date 2005/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100252
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患者状態適応型パスとは
患者状態適応型パスの提案
わが国においてパスの原型が認識されてから,それほどの時は経過していない。導入当初,日常的に行なわれている診療行為の記述,そして標準的(理想的,典型的)診療プロセスの記述という,なかば無意識のうちに標準化への第一歩を踏み出し,その有用性が認識されるに伴い,さまざまな工夫が加えられるようになった。例えば,医療プロセス標準化の一環としての位置づけ,診療チーム内のコミュニケーション向上や価値観共有,さらに患者との良好なコミュニケーションツールとしての活用,記録としての役割の認識,そして電子化などである。
だがパスには,その健全な発展を阻害しかねない問題があった。その第一は「バリアンス」である。患者病態の多様性に適応できず,「パスに乗る」割合が半分程度であって,あたりまえのやさしい診療にしか使えないツールになっているというのである。第二は「標準化不可能」論である。つまり,パスをつくろうとしても,医師から「患者の個別性に対応すべき医療が標準化できるわけがない」と反対され,看護の立場からのパスにとどまっていたりする。医師を巻き込んだパス作成に挑戦できたとしても,医師によって,また状況に応じて,さまざまな流儀の診療が行なわれていて,一つの標準的なパスに絞ることができないという状況がある。
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