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デイホスピス導入の背景
欧米で始まったモダンホスピスの運動が1980(昭和55)年頃から,特にがんの終末期ケアを中心にわが国にも伝えられて以来,2005(平成17)年10月にはホスピスや緩和ケア病棟が150施設を超えるなどわが国でも活動は広がり,現在では在宅での活動も増えてきています。ホスピス緩和ケア病棟の普及に伴い,がん治療と同様に苦痛を緩和することが療養者にとって重要,という理解と熱意も生まれ,現在では緩和ケアに対する関心が高まっています。
がんは1981(昭和56)年以降,わが国の死亡原因の第1位を占め続け,3人に1人ががんで亡くなっています。がん患者が増加するなか,がんとともに歩む人々の健康に対する関心も高くなってきていることから,病を抱えながら“いかに生きるか”を考え,真剣に向き合う医療が必要になっています。しかしわが国の医療を取り巻く環境は,在院日数の短縮化が推進され,施設入院から外来治療・継続的ケアへと,変化を余儀なくされています。このことは,主な治療を終えた後は早期に在宅医療へ移行するということを示しています。ところが,今日の加速する医療政策の改革においては,積極的治療を終え,在宅療養をしている患者に対する包括的医療システムがいまだ整備されていません。患者がこれまでの生活圏のなかで安心して暮らすには,がん治療から退院後のフォローアップ,終末期に至る経過のなかで,医療機関と地域資源を活かした包括的緩和医療体制を確立することが必要となります。欧米では,自宅療養している患者と家族のQOL向上を図るための緩和ケア支援プログラムとして,デイホスピスが深く関与していました。わが国でも,地域で患者と家族の願いを実現する緩和ケアサービスの一環としてのデイホスピス導入など,新たな地域医療サービスの確立が急務といえるでしょう。
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