焦点 災害看護学の構築に向けて・Ⅰ
災害による心理的影響と回復過程への支援—文献検討に基づく考察
近澤 範子
1
1兵庫県立看護大学
pp.333-345
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900464
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はじめに
日本では,過去にいくども地震や洪水,火山の噴火などの大きな自然災害が発生し,また,戦争,原爆投下という大惨事をはじめ,航空機墜落などのさまざまな事故,あるいは集団テロ事件,連続殺人事件など,多くの災害が生じてきた。それにもかかわらず,繰り返される災害に対して,我々はいかに無防備であったことか。救援体制や被災者への支援の方法について,過去の多くの貴重な経験から学んで次に備える取り組みをいかに怠ってきたことか。その愕然とする事実に直面したのが,1995年に遭遇した2つの大惨事,すなわち,阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件であった。あれから3年あまりが過ぎた今,被災者の心身の痛手がいかに深く,その回復と生活の建て直しへの過程がいかに険しいものか,我々は今,その厳しい現実を目の当たりにしている。
しかしながら,その一方で,これらの出来事を機に世界各国からの支援を受けつつ,災害が人間にもたらす影響や災害時の救援体制,被災者への支援活動のあり方などについて,懸命に学びつつ復興に向けて取り組んできたことも事実である。
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