Japanese
English
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
Ⅰ.はじめに
現在,乳がんは,日本における女性のがん罹患率の1位である.最近では乳房温存術やセンチネルリンパ節生検により従来のようなボディイメージの変容や機能障害の問題における患者の負担は少なくなってきている.しかし,乳がん罹患のピークをむかえる45〜54歳は,女性のライフステージ上では家庭的にも社会的にも多様な役割を担い,ホルモンバランスの変動もある時期であり,また乳房がセクシュアリティと密接に関連していることなどから,乳がん患者は「再発・転移の恐れ」,「身体的苦痛症状」や「不確かさ」などのさまざまな問題を抱えているといわれている1)〜6).このようなストレス状況下にある乳がん患者がうまく心理的に適応するためには,ストレスに対するコーピングの強化が重要であり,そのための看護支援の視点を明確にしなければならない.
がん患者が,あと何年生きるかでなく,どのように生きるかという生命の質を高める視点からの研究7)が始められたのは1970年以降である.1980年代には,がんに対する心理的適応と抑うつ反応の関係8),ストレス・コーピングとソーシャルサポートの関係9)など,がん患者の心理的適応に焦点を合わせた研究が報告された.1990年半ば以降は,「adaptation」,「psychosocial adjustment」よりも「QOL」という言葉が多用され10),QOLを心理的適応の類義語として取り扱っている研究が多く見受けられる.それは,多次元的評価尺度であるQOL尺度が開発されたのにともない,がん患者の心理社会的側面をQOL尺度で評価する研究が増えたからと考えられる.そして,それらからは,乳がん体験者の心理的適応がさまざまな要因の影響を受けていることがみえてきている.
心理的適応はプロセスであり,対処している人とそれを取り巻く環境との関係のなかで行われていることから,乳がん患者のコーピング強化のためのケア視点を検証するためには,それらに影響を与えている要因を整理する必要がある.本稿では,先行文献をレビューし,乳がん患者の心理的適応およびコーピング方略に影響を与えている要因,心理的適応に関連するコーピング方略を考察することを目的とする.
Copyright © 2011, Japanese Society of Cancer Nursing All rights reserved.