研究
患者—看護者のコミュニケーションにおける悪循環の構造—ある精神科閉鎖病棟での患者の死をめぐって
野村 直樹
1
,
宮本 真巳
2
1名古屋市立大学
2東京都精神医学総合研究所
pp.143-163
発行日 1995年4月15日
Published Date 1995/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900296
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
精神病院で生じた事件や出来事は,ものすごい速さで風化してゆく。その時その時の急を要する対処に追われる看護者たちは,1週間も病棟をあけると様子が大きく変わっていることに気づくことがしばしばある。ここにとりあげる一連の出来事は10年前に起こった。今この病院で働く人々には,これは遠い過去の一風景にすぎないかも知れない。
1984年から85年にかけて,野村は関東地方のある中規模の単科精神病院で,1年間にわたってフィールドワークを行なった。当時籍を置いていたスタンフォード大学の文化人類学コースに提出する博士論文を書くための調査で,院長の許可とスタッフの了解のもとに,野村は病院のあらゆる活動に参加させてもらうとともに,3週間にわたり入院患者と同じように病室に寝泊りする“入院”体験を持った。
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.