特別寄稿
医療の萎縮を考える―医事紛争の悪影響について
長野 展久
1
Nobuhisa Nagano
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医学,東京海上メディアサービス
pp.489-493
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100836
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世界一の長寿国である日本の医療レベルは,かなり高い水準にあることはいうまでもないが,それを維持するために,多くの医療関係者が献身的な努力をしていることも,決して忘れてはならない.ところが,一部の病院や医師が起こした残念な医療事故により,医療そのものに対する不信や不満が高まってきていることもまた事実である.そのことを裏付けるように,裁判所に持ち込まれる医事関係訴訟は右肩上がりで増加していて,平成14年の第一審新受件数は896件にも達している.
そのため各医療機関では,厚生労働省の指導のもとに,医療事故防止対策を最優先課題として取り組み始めている.例えば,患者取り違え,異型輸血,薬剤投与ミスなどを水際で防ぐために,患者にはリストバンドを装着させ,オーダーエントリーシステムやクリティカルパスを積極的に導入したり,内服薬を誤注射しないように注射シリンジを色分けしたりなど,様々な工夫を凝らして医療スタッフへの注意喚起を促している.
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