特集 国際シンポジウム「家族看護学研究の動向:患者と家族のQOLの向上と看護の充実をめざして」
第III部 援助システムから見た家族看護学研究の動向
シンポジウム・4:病院を基盤とした訪問看護における「家族看護」と援助システム
草刈 淳子
1
1千葉大学看護学部
pp.233-240
発行日 1994年6月15日
Published Date 1994/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900200
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在宅ケアへ向けた一連の法改正と,病院基盤のHome Careにおける家族看護の重要性
わが国における病院を基盤とした訪問看護事業それ自体は,すでに70年程前に聖路加国際病院において公衆衛生看護部が開始されており,今に始まるものではありません。しかし,社会保険において,「在宅ケア」が診療報酬点数として新設されたのは,老人保健法が施行された1983年からです。その後,精神疾患(1986年),寝たきり老人(1988年)が訪問看護指導料の対象に加わり,さらに昨1992年4月からは,老人に限らず一般疾患患者も対象とされるに至りました1)。この背景には,1987年6月の国民医療総合対策本部(厚生省事務次官を本部長とする)の中間報告が関与しています。すなわち,今後の「良質で効率的な医療」をめざして,①老人医療の問題,②長期入院の是正,③大学病院における医療と研修の見直し,④患者サービス等の向上,が挙げられ,これに基づいて「21世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方」が1991年に厚生省健康政策局から出され,具体的対策として展開されてきたものと言えましょう。
さらに一昨年(1992年)の,看護に重点を置いた大幅な診療報酬支払い点数の改正では,外来看護婦の指導に対する「在宅療養指導料」が新設され,他方,在院日数短縮化を図るための「入院費の逓減化」が強化され,これらの誘因作用により,病院側の「在宅医療」への傾斜が加速化されました。
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