書評
精神医療の専門性を新たに問い直す画期的な書
榊原 哲也
1
1東京女子大学現代教養学部人文学科哲学専攻
pp.310-311
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202212
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本書は,「精神症状」に着目し,「薬物療法」等によって症状を管理して治療を行う,日本の精神科病院において支配的な「医学モデル」に根差した精神医療に対して,それとは異なる試みを参照することで,「精神医療の専門性」をあらためて問い直そうとしたきわめて意欲的な試みである。
著者は,浦川赤十字病院の精神科開放病棟で精神科看護師としてのキャリアを始めたが,別の現場で患者の精神症状を薬物療法や行動制限で過剰にコントロールしようとする医療専門職の姿を目の当たりにして,現代日本の精神科医療が抱える問題に直面し,阿保順子教授(北海道医療大学,当時)の研究室に跳び込んだ。そして阿保教授の紹介で,重度の精神障害者の地域生活を24時間365日地域で支えるACT(包括型地域生活支援プログラム)に出会って衝撃を受け,一気に魅了された。本書の副題にある〈「治す」とは異なるいくつかの試み〉とは,まさにこのACTの実践の試みである。
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