特集 慢性看護学における事例研究法の進展
4論文作成をサポートする—サポートのあり方と考え方
事例論文に挑む人への示唆とサポートの留意点
山本 力
1,2
1岡山大学
2就実大学
pp.532-536
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202149
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はじめに
何かを語るとき,どの立場から物事を観て述べているのかを明らかにすることは大切なことであろう。そこで,筆者の専門的立場を最初に明記する。専門領域は臨床心理学,別名心理臨床学である。日々の心理療法的援助を通じて収集した臨床素材を再構成して専ら事例研究に取り組み続けてきた。要するに主たる研究法が,事例研究を主軸にした広義の質的アプローチである。その経験をもとに2冊の書籍を著わした(山本,2001;2018)。そんな背景をもつ筆者が,慢性看護学の諸先生と出会ったのは2015年であった。
まず,内田雅子先生からコンタクトがあった後,黒江ゆり子先生から以下のようなメールが届いた。「看護学においては,1970年代は事例報告および事例研究が基盤になっておりました。その後,量的研究,質的研究,混合型研究など多様に発展したのですが,看護実践そのものに焦点を当てた事例研究の位置づけが十分にできなくなった現状があります。私たちは看護ケアの『実際』に焦点を当てることのできる事例報告および事例研究について,その意義と方法についての検討を深め,看護学研究に位置づけようとしています」。これをきっかけに2016年には日本慢性看護学会に入会し,科研の集まりや学術集会で看護事例について討論や検討を行いながら,今日に至っている。
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