特集 慢性看護学における事例研究法の進展
3論文を作成する
—Topic 2—事例研究論文作成の上で考えておくべき倫理的課題
小長谷 百絵
1
1新潟県立看護大学看護学部
pp.528-531
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202148
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はじめに
本稿で取り扱う事例研究は,看護職が臨床において特定事例への実践から着想を得て自らの経験を省察する,後ろ向きの質的研究である。看護ケアの評価や事例のもつ問題の解決方法を提示し,臨床現場での応用や理論を浮き彫りにする研究である。
事例研究は,個人情報というプライバシーと,ベッド,居室,居宅という空間のプライバシー,あるいは心の「私」のプライバシーに迫る研究であるため,事例研究の発展のためにも,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和5年3月27日一部改正)」註1に依拠する倫理的配慮は必要である。
そのため,看護系の学術誌に掲載されている看護師自らが実践した事例を省察する研究論文の多くは,所属施設の研究倫理審査委員会の承認を受けている。また事例研究は看護実践に根ざしたものであるため,看護職の倫理綱領に基づく実践であるかの検討も,執筆の上で重要である。
事例研究の倫理的妥当性のうち,①事例選択における恣意性,②事例研究の利益と不利益,③データ収集の客観性,④インフォームドコンセント,⑤個人情報の保護・秘密保持の限界について,すでに掲載されている論文を参照しながら倫理的配慮の視点を紹介する。
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