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はじめに
2次利用データは,もともと別の目的のために収集されたデータで,新たな研究や分析に再利用されるものである。近年のSARS-CoV-2パンデミックが,医学研究における既存データへの包括的なアクセスとその簡便な利用の重要性を再確認させた(Richter, Borzikowsky, Hoyer, Laudes, & Krawczak, 2021)。患者データの2次的な利用は,医療の翻訳と個別化を効率的かつ持続的に推進し,公衆衛生の向上に寄与するとされている(Richter et al., 2021)。
医学領域では,医療ビッグデータを含む,2次利用データの活用が増加している。その理由は,①新規データ収集の時間と費用の負担を軽減できる,②医療記録や看護記録など多様なデータソースから得られ,複数視点の分析が可能である,③大規模データセットを利用することで一般化可能な結果が期待できる,④長期間のデータ追跡が可能となり,患者ケアへの影響を詳細に分析できるといった点である(Schlegel & Ficheur, 2017)。これらは,2次利用データの活用がもつ大きなメリットである。
また,データの2次利用は,従来のデータ収集型の研究に比べて,効率的な研究方法であるとされている(Dunn, Arslanian-Engoren, DeKoekkoek, Jadack, & Scott, 2015;Trinh, 2018)。その理由は,①時間と費用の節約,②大規模なデータセットの利用,③経済的・倫理的問題の回避などである。すでに収集されたデータを活用することで,研究開始から結果が得られるまでの期間が短縮され,新たなデータ収集をするための費用を削減できる。また,既存のデータベースには大量のデータが含まれており,その信頼性や一般化可能性が向上する。さらに,新たなデータ収集に伴う経済的負担や倫理的問題を回避できる。2次利用データの活用は増加しており,それは効率的な研究手法でもある。
このようなデータの2次利用をする場合,医療統計学的な考え方が重要となる。まず,データの品質や適切性を慎重に評価し,欠損やバイアスを考慮して適切なデータセットを選択する。次に,明確な研究デザインと仮説を設定し,統計学的手法を用いて信頼性のある結果を得る。また,様々な形式の2次利用データに対応するため,適切なデータ解釈や集計,統計手法を選択し,複数の手法を比較検討する。最後に,結果に対する根拠を確認し,誤った結論を避けるため統計学的知識を活用する。これらの観点から,データの2次利用には医療統計学的な考え方が不可欠であると考えられる。
本稿では,2次利用データの活用に焦点を当て,すでに研究仮説が決まっている前提で記述する。他の文献では触れられない,研究発表を効率的に進めるためのデータの取り扱い方を紹介する。
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