特集 日々の医療情報を研究に活かす—データの2次利用に向けて
分析可能なデータを抽出するための3つのアプローチ
横田 慎一郎
1,2,3
1東京大学医学部
2東京大学医学部附属病院企画情報運営部
3東京大学医学部附属病院病歴管理部
pp.334-341
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202114
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はじめに
本稿では,電子カルテシステム,訪問看護システムや医事会計システム等,医療情報システムに蓄積された診療記録・看護記録・医事会計データ,すなわち医療リアルワールドデータを2次利用することで,臨床業務や管理業務改善のための基礎となるデータを得たり,学術的な新たな知見を得たりするための分析用データセットを抽出する方法について述べる。なお一般に,医療リアルワールドデータには,学会等が実施する症例レジストリデータや,DPC導入の影響評価に係る調査のデータも含まれるが,本稿では医療情報システムについて取り上げる。
医療情報システムの中に格納されているリアルワールドデータを抽出するには,データが格納されているデータベースの構造を知っておく必要がある。データを抽出するためのクエリ言語や,取り出したデータからさらに加工するためには,コンピュータプログラムの知識が必要である。また,分析過程においてデータの意味を解釈するには,臨床現場におけるデータの発生に関する運用の知識や医学・医療に関する前提知識が必要である。さらに,そもそもは将来的なデータ2次利用を考慮して,抽出しやすいように形式の揃った,すなわちある程度「標準化」された情報を,日常業務において入力する必要がある。すなわち,分析可能なデータセットを抽出するには,抽出前のアプローチ(データの標準化,運用の標準化など),抽出時のアプローチ(問い合わせ言語やコンピュータプログラムによるデータの抽出),抽出後のアプローチ(データの加工,異なるデータソースから抽出したデータの突合,分析結果の解釈など)がある。以降,解説を試みたい。
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