特集 これだけは知っておきたい治療のポイント
IX 血液・造血臓器
1.貧血の治療
思春期貧血の取り扱い方
古谷 博
1
1順大産婦人科
pp.1886-1888
発行日 1973年11月20日
Published Date 1973/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205151
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
思春期には急速な身体発育,性機能の発達を伴う内分泌の激しい変化があり,物質代謝にも男女の差異が明瞭になってくる.かつては卵巣機能の低下と低色素性貧血を特徴とする萎黄病が思春期の女子に珍しくなかったが,今日においても初潮発来の時期に低色素性貧血が多く現われ,これに卵巣機能の失調ないし低下を伴う場合があり,無月経を特徴とする萎黄病までには至らなくとも,この軽症型ともみなされるものが必ずしも少なくない.これを思春期貧血とよぶ表現が適切であるかどうか,明確な定義は与えられていないが,女性に多い低色素性貧血がこの年代から出現してくるので,この時期の内分泌,物質代謝,造血機能と関連して注目されている.
思春期にみられる貧血は,大部分が鉄欠乏によるものである.それは栄養・代謝の面からみると,思春期における急速な身体発育と月経開始などによって鉄の需用が亢進し,一方食餌からの鉄の補給が不十分な場合に貧血が起こるものと考えられている.そしてかなり貧血が著明でも,自覚症状が少ないために放置されている場合が少なくない.これは学校保健の面からも,また将来の母性保健の面からも,見逃すことのできない問題である.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.