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なぜ「地元創成看護学」なのか
地元創成看護学は,24期の〔令和2年(2020年)9月2日〕日本学術会議健康・生活科学委員会看護学分科会より発出した「提言「地元創成」の実現に向けた看護学と社会との協働の推進」において,「地元(home community)の人々(population)の健康と生活に寄与することを目的として,社会との協働により,地元の自律的で持続的な創成に寄与する看護学である」と定義されている。実際には,私が知っている範囲において,23期から2期にわたって,看護学分科会で議論してきた。当初は,政府の「地方創生」という言葉を用いており,「地元創成」に落ち着いたのは,第24期が始まったばかりの地元創成看護班会議においてであった。特に,「地方」ではなく「地元」がいいのではないかと提案がされた後にも,この言葉が意味する範囲について,日常的に「地元」が用いられる例を挙げ,分科会でイメージを固めてきた。その結果,「地元」を,「看護の対象集団・組織等が所在する地域,または看護系大学等の組織の理念や趣旨に根差す特定の地域,地理的境界もしくは共通の特性でかたどられる社会集団」と定義し,ここには,「多様な心理社会的な共同体・集団を幅広く含み,風土・文化背景を含む帰属意識をもつ人々の社会集団,及びローカルからグローバルなレベルを含む」こととなった。
この提言において「地元」に注目したのは,人口減少と少子高齢化,および人口の東京圏への一極集中への危機感という,日本の人口動態を背景としている。この背景のもとでは,保健医療福祉分野の複雑で多様な課題については,全国一律の方策で解決することはできないと考えた。言い換えると,地元によって課題も違えば,それに応じる社会資源やその不足も異なっている。それを全国一律として考えることは,問題状況を捉え損ね,適切に対応が講じられない可能性があると考えられたのである。
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