特集 理論をつくる・つかう・つたえる—実践にいきる理論構築に向けて
理論構築のすすめ—これからも旅は続く
坂下 玲子
1,2,3
1兵庫県立大学
2兵庫県立大学看護学部
3兵庫県立大学臨床看護研究支援センター
pp.80-82
発行日 2022年2月15日
Published Date 2022/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201962
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なぜ,理論構築が重要なのか
理論とは,個々の現象を言語化し,筋道を立てて説明した知識の体系である。学問とは,理論に基づいて体系づけられた知識と研究方法の総称(大辞泉,2021)であるから,学問の発展は,理論の発展に大きく依っている。
もしかしたら看護研究者の中には,医学の進展と同じように看護学も成熟した学問であると考えている人がいるかもしれない。看護は行為としての歴史は長いものの,学問として考えた場合,その端緒は,看護理論が次々と発表されていった20世紀半ばからだろうと私は思う。もちろん,多くの看護理論家が指摘するように,看護に専門性を見出し言語化したのは19世紀のNightingaleである。『看護覚え書き』(Nightingale, 1860)は,読み返す度に看護の本質を教えてくれる名著である。しかしその後,理論と呼べるものは,1952年に出版されるDr. Peplauの『人間関係の看護論』(1952)まで待たなければならなかった。以降,理論が続々と発表されるようになるのは1960年代に入ってからである。世界で最初の看護研究の学術誌Nursing Researchが発行されたのが1952年であることを考えると,看護学はまだ100年の歴史もない学問なのだ。医学が大学教育に組み込まれたのは11世紀といわれるから,看護学はまだ黎明期であり,いまは学問としての看護学を構築している段階だと私は考えている。だからこそ,理論構築はもっと気軽に,自由にチャレンジしてほしい。
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