増刊号特集 看護実践に関する事例研究の査読基準を考える—「ケアの意味をみつめる事例研究」を中心に
看護実践に関する事例研究の査読基準を考える—「ケアの意味をみつめる事例研究」の開発を通して
山本 則子
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1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻高齢者在宅長期ケア看護学分野
pp.270-274
発行日 2020年7月15日
Published Date 2020/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201774
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「ケアの意味をみつめる事例研究」開発の取り組み
私たち註1は,臨床実践に即した看護の実践知を明示化し広く共有できる知とすることを目的として,研究方法を検討してきた。看護師・患者の文脈が深く関与し一回性を特徴とする看護実践について,一人の看護師の経験から別の看護師がどうやって学び得るのかを考え,個別事例からの学びに着眼して事例研究の方法を考えている。患者・家族によき変化をもたらす看護実践のありようを他者にわかるように伝えるためには,実践者自身が実践の意味を深く内省し,実践の意味に気づき,実践とその意味を言葉にすることが大切と思われた。そこで,そのような内省を進め,ケアの意味を発見し言語化する研究方法を,「ケアの意味をみつめる事例研究」として,看護学における研究方法の1つに位置づけたいと企図している。将来的には,事例研究の蓄積により現場発の看護学として何らかの体系化を試みることを願い,事例研究論文は,気づかれた意味と実践の記述を,それらを端的に示す概念ごとに紹介する形を提案しており,「概念統制型事例研究」と呼ぶこともある。
「ケアの意味をみつめる事例研究」の研究方法としての開発は,はじめから意図されていたものではなかった。現場の実践者と共に事例研究に取り組む経験が大変興味深く,その面白さに惹かれて事例研究を継続してきた結果,その方法を人に伝える必要性が生じて取り組み始めた。なによりも,実践者自身が,事例研究の過程と明示化された分析結果を楽しみ,ある訪問看護管理者から,「(山本との)事例研究は,看護師にとっての心情的援助になる」と言われたことが,私にとって大きな動機づけになった。
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