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はじめに
私は現在,博士後期課程の1年である。博士後期では,高齢者に対するケアの改善につながるような研究を通して臨床現場に貢献したいと思っている。
私の所属する研究室(福井小紀子教授)では,主に終末期ケア,認知症ケアに主眼を置いたテーマを掲げている。それぞれのテーマでケアの質を高めるための研究を行なっており,具体的には,医療介護連携や在宅施設のケアの質評価,ITシステムの構築,若年性認知症ケアシステムの開発,転倒予防のための包括的アセスメントとケア開発など,地域包括ケアシステムにつながるような研究を進めている。これらの研究を推進するために,学生は柔軟性のある思考と厳密な方法論を学ぶ必要がある。そのための研究室全体の取り組みには,大学院のゼミ(2週に1回)と文献抄読会(月1回)がある。それに加えて,国際的に研究成果を発信するための取り組みとして,英語論文セミナー(月1回:現在は必要時),JBI(Joanna Briggs Institute)主催のシステマティックレビュー執筆のための集中セミナーなどがある(牧本,2013)(JBIについては,本特集で執筆されている牧本清子氏の別稿を参照いただきたい)。
私は11年間,国立病院機構で看護師として勤務していた。この研究室で学びたいと思ったきっかけは,3点あった。第1に,私は病院勤務の中で,睡眠検査を中心に認知症,呼吸器(感染症,がんなど)の政策医療に基づいた臨床研究(低栄養状態の外来高齢患者の栄養・家族指導,医師の共同研究者としてレム睡眠行動異常症疑いの患者の事例検討など)に関わっていた。その経験から睡眠に興味を抱いた。第2に,当時研究室では,睡眠検査が困難な,入院中の認知症患者の睡眠障害に対する効果的な介入を見いだすため,いくつかの睡眠モニタリングデバイスを用いることで,認知症患者のアセスメントに数値的な側面を導入していたことである。そして第3に,看護師として,臨床での経験をいかして高齢者の現状を科学的に解明できるような研究をしたかったからである。
入学後,1年目に,私は2017年3月に開催された「The 20th East Asian Forum of Nursing Scholars(以下,EAFONS)」でポスター発表をすることになった。その結果,ポスターアワードを受賞することができた。今回,本特集でこの経験を寄稿する機会をいただいたので,研究室の仲間や先輩方,教員の先生方からの指導を振り返りつつ,発表までのプロセスについて読者の方々と共有したい。なお指導いただいた教員は山川みやえ先生と,現在は甲南女子大学に所属されている牧本清子先生である。
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