増刊号特集 看護の未来を創造する アクションリサーチ─人々とともに,人々のために
フィールドにおいてアクションリサーチのもたらす意味─科研と博士論文の取り組みを通じて
伊藤 久美
1
1帝京科学大学医療科学部
pp.366-374
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201530
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なぜ,研究方法としてアクションリサーチを選択したのか
アクションリサーチがもつ力
アクションリサーチは,「研究者が人々に対して(on)研究するのではなく,対象の人たちとともに(with),その人たちのために(for),その人たちによって(by)」作業するという特徴をもった参加型の研究形態である。活動(action)に焦点を当てている点では,他の参加型研究とは異なる(Meyer, 2006/矢部訳,2008,p.111)」。そして,実際の現場における問題を明確にし,可能な解決策を探るために行なう協働的介入であり,実践改善の意図をもって始まる研究方法である(Morton-Cooper, 2000/岡本,関戸,鳩野訳,2005)。さらに,自分たちに共通する問題を解決していくプロセスにおいて活発に活動すれば,自らの行為の結果を理解できる考え方や行動の仕方を学習し,よりよい結果を探求するプロセスを継続できる(Kiefer, 2006/木下訳,2010)という特徴をもっている。
つまり,課題を解決するための変化を生み出す力と変化を起こす可能性を有し,この変化は個々人だけでなく,関係する周囲にも波及する。そして,自分たちの問題を自分たちの力で,自分たちが望んだよい方向へと変化させていく過程や成果を実感できたとき,そのプロセスを継続させたり,他の問題にも活用したりすることができるのである。
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