特集 事例研究をどううみだすか─事例がもたらす知の可能性
関連領域から
医学におけるケースレポート─その意義と方法
水野 篤
1
1聖路加国際病院循環器内科
キーワード:
ケースレポート
,
Abstraction
,
患者
,
症例
Keyword:
ケースレポート
,
Abstraction
,
患者
,
症例
pp.468-475
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201419
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はじめに
いち循環器内科医として勤務している自分が経験し,論文として数多く投稿させていただいているものは「症例報告=Case report(ケースレポート)」である。そして,この“症例”というものは,そもそも“患者”である。この“症例”と“患者”の違いはどこにあるのか,これこそがわれわれが医療従事者として,臨床を行ないながら感じておく必要があるところである。
基本的に“症例”というものは,一般的な感覚からすれば,個人情報という観点からの“個”の消失であるかもしれない。しかし,医療従事者にとって最も重要なことは,この“個”の消失というものは個人情報の削除というだけではなく,それを抽象化=Abstractionするということであり,われわれが日常臨床の中でScienceとArtの狭間を動くために,つかず離れず行なわなければいけない科学的行動であることを認識していないことが多いということである。
すでに少々“言葉遊び”のような感じすらするが,この“情報を捨てること(取捨選択)≒抽象化:Abstraction”を「どの程度」するのかということを認識しながら臨床を行なうことこそが大切であることを理解していただく必要がある。前半においてはこの“患者”から“症例”に至る情報のAbstraction,より一般的用語としては「情報の取捨選択」についてやや重く(しつこく),後半はこれらをケースレポートにする方法と意義について学ぶ中で軽く触れていきたいと考える。特に本誌を読まれるであろう看護師・看護研究者に少しでも役立てればと思う。
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