増刊号特集 1 看護学の知をどう構築するか
看護師の「考える力」が,看護の知をつくる
山田 雅子
1
1聖路加国際大学大学院看護学研究科
pp.315-319
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201393
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はじめに
看護の知とは何か。看護学を学んだ者は,そうでない者と違って何を知っているのか。看護学を学び国家試験に合格すれば,日本の看護職として,看護実践を行なう専門職業人として経済的にも評価されるが,果たして看護職は看護の知をどれほど知っていて,それをどれほど実践できているのか。
看護学の発展は,医学の中の一部ではないという強い意識から,看護研究者らが地道な言語化を通して,独自の理論を立ち上げてきた。ナイチンゲールをはじめ数々の看護研究者らによる看護理論は,看護を学ぶ学生にとって多くの気づきを与え,看護を学ぶスピードを速めているに違いない。しかしその知をもって看護職として就職したとき,それらの看護理論は,看護職の認識の中から遠のくのである。筆者は認定看護師教育に携わっているが,多くの受講生は,看護理論を学び直すことで,「こうやって,患者のことや自分が実践したことを看護理論で説明することができるのだ」という一種の感動のような気づきに至る。つまり,その気づきは,5年以上の看護経験において,看護理論と実践が融合していなかったことの表われである。そして受講生は看護理論を再学習することで,後輩たちに自分の看護実践を語るための言語を獲得する動機づけを得るのである。
この現象から,看護の知はあまたあるものの,それを意識して看護実践に活用している看護職は少ないのではないかと筆者は考えている。そこで,看護理論が実践を変えるプロセスに多くかかわってきた経験から,今後,理論と実践を統合していくことのできる看護実践とはどのようなものか,考えを述べてみたい。
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