特集 査読を考える─査読ガイドラインの構築に向けて
〈査読を受けた経験をいま査読者としてどういかすか〉
投稿経験から考える査読のプロセスと査読者の役割
河野 あゆみ
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1大阪市立大学大学院看護学研究科
キーワード:
学術雑誌
,
研究論文
,
査読
,
投稿
Keyword:
学術雑誌
,
研究論文
,
査読
,
投稿
pp.714-718
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201208
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はじめに
研究者として研究論文を書いては雑誌に投稿することを行なうようになって,約20年になる。共著者の論文も含め,これまで100回以上は投稿者として査読のやりとりを行なってきたと思う。最初はもっぱら投稿者として査読コメントに対応するのみであったが,少しずつ投稿論文の査読を頼まれるようになり,最近では編集委員として編集判断を求められる機会が増えてきている。
初めて査読を頼まれたときは自分が一人前の研究者として認めてもらえたように思い,誇らしげに,いま考えればいわゆる「上から目線」の査読コメントを書いていたのではないかと恥ずかしく思っている。しかし,査読はpeer reviewであり,立場を同等とする研究者同士が論文の科学性を真摯に追求し,掲載論文の質を担保するためのしくみである。査読をする者と査読を受ける者の間に,本来,上下関係はなく,査読者である限り,同時に投稿をする立場でもあることが健全な学術コミュニティのあり方と考えている。
論文の書き方は大学院等で教育を受けるのに対し,査読や編集の方法については,自分の投稿経験や学術雑誌編集の仕事を通して学ぶものであり,自分の考え方が果たして正しかったのか,いつも内省しながら作業をしている。しかし,「人の振り見て我が振りを直せ」という言葉のとおり,他の人が作成した論文を読むことは,自身の論文作成や論文指導に大いに役立つ絶好の学びのチャンスである。限られた経験ではあるが,私自身が論文投稿経験を活かしながらどのような査読を行なっているのか,査読のプロセスと査読者の役割について振り返ってみようと思う。
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