増刊号特集 大学院で学ぶ意味─新たな看護を創るために
〈博士修了の立場から〉
新たな知の創造
山内 朋子
1
,
筒井 真優美
1
1日本赤十字看護大学
pp.322-326
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201133
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■修士論文・博士論文の概要
修士論文「他者とうまく距離をとることができない発達障害の学童に対する看護師のかかわり」
学童期精神科閉鎖病棟に入院している子どもの中には,家族や看護師に抱きつく,他の子どもが嫌がってもかかわり続ける,家族や他の子どもに言動を指示するなどの言動がみられる発達障害の学童がいる。この研究は,そうした他者とうまく距離をとることができない発達障害の学童に対して,看護師がどのようにかかわっているのか,具体的な実践内容を探究したものである。看護師は,発達障害の学童が他者との距離が近い理由やその意味を探り,子どもに対処方法を伝え,アタッチメントを修復することで,子どもが距離の近さで訴える“人とかかわりたい”思いに応えていたことを示した。
博士論文「児童精神科病棟の自由時間のホールで展開される発達障害の学童への看護師のかかわり」
発達障害の学童は障害特性や独自の空間認知特性の影響から,自由に過ごすことや集団行動などが苦手である。特性による集団生活上の困難さに,虐待やいじめなどの傷つき体験が絡み合って日常生活に支障をきたした発達障害の学童は,児童精神科病棟への入院を余儀なくされていた。この研究は,病棟に設けられた1日の生活スケジュールのうち,発達障害の学童が過ごす非構造化された自由時間と,複数の人々と一緒に過ごすホール空間に着目し,治療目的や看護師が行なうケアが明確になっていない特定の時空間で展開されるかかわりを探求している。得られた結果から,発達障害の学童が苦手とする自由時間や刺激に溢れた空間,集団の場における支援のあり方が示唆された。
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