増刊号特集 1.博士論文を書くということ─あのときの問いといまの問い
繰り返される対話―新たな知の創造に挑む
池添 志乃
1
1高知県立大学看護学部
pp.289-292
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100918
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博士論文執筆のプロセスの中で,自身の研究者としての姿勢の基盤になっていることは,データとの「繰り返される対話」を通しての学びである。博士論文では,理論的モデルの構築を目的として,グラウンデッド・セオリー法を用いて取り組んだ。データとの対話を繰り返す中で,その現象にみられる固有の特徴ともなる本質を読み解き,新たな見方─知を創造することを学ぶことができた。また,自らの思考の振り返り,転換が求められる大きな挑戦ともなった。本稿では,博士論文執筆の中での貴重な学びであった,データとの「繰り返される対話」について振り返ってみたいと思う。
データとの「繰り返される対話」を通して導かれる「新たな見方の創造」
独自の語りから紡がれるストーリーとの対話 データとの対話の第一歩は,語りの一言一言に対して,どのような意味があるのだろうか,何を表わしているのだろうかと問いを発しながら,自問して向き合うことであった。同じ言葉であっても,状況や場面が異なると当然,その言葉のもつ意味が違ってくる。1つの単語を全く文脈から切り離して捉えるのではなく,文脈の中の意味を踏まえながら,その意味を視ていくようにした。また逆に,文脈そのものに対する先入観から離れるために,いったん文脈から離れ,単語そのものの意味について見つめ直してみるなど,あらゆる角度から,語りの現象を視るようにした。そうした語りから紡がれる現象を捉え,さらにその現象間の関係を見極めながら概念化を進めることを,丹念に行なうよう心がけた。
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