- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
今回のJournal Watchでは,International Journal of Nursing Studies(IJNS)誌の第51巻6号,BMC Health Service Research(BMC HSR)誌の2014年5月掲載分の論文が対象になりました。今回から,充実した議論ができるよう本数を減らすことにしています。担当者が興味をもった論文を選定し,IJNSより3篇,BMC HSRより4篇,合計7篇(質的研究4篇,量的研究3篇)が発表され,それぞれの研究内容や研究手法に関して議論が行なわれました。
今回,特に参加者の関心を集め議論がなされた論文は,オーストラリアの複数の長期療養施設で行なわれた,認知症患者に対するフットマッサージの介入効果を検証しようとする量的研究論文でした。認知症患者の行動・心理症状(BPSD)は,患者自身に苦痛をもたらすだけでなく,家族や介護スタッフの負担を増大させることから,高齢者看護における大きな課題のひとつとなっています。
これまでのBPSDに対するさまざまな介入の試みの中で古くから注目され,研究されてきたものとしてマッサージがあげられます。フットマッサージはその1つであり,先行研究でその効果が示されているものの,エビデンスレベルが低いデザインを用いたものが大半であることから,著者はRCTを用いて介入効果を検証しようとしています。
当該研究はトライアル・レジストレーション(臨床試験の事前登録)がなされ,事前にプライマリアウトカム(患者の興奮状態の尺度得点)とセカンダリアウトカム(患者の情動の尺度得点)が設定されています。分析の結果,プライマリアウトカムである興奮状態は介入によって増悪し,セカンダリアウトカムである情動は,介入による効果は認められないという結果となりました。
発表後,参加者によりネガティブデータ(ここでは「研究者が期待したものとは異なる結果」の意で用いています)をどう考察するかという議論,および認知症患者を対象とする介入研究で考慮すべき点についての議論が行なわれました。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.