焦点 セルフケア
解説
老人看護とセルフケア
中島 紀恵子
1
1日本社会事業大学
pp.449-454
発行日 1987年10月15日
Published Date 1987/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200946
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はじめに
この3年ほど,短期間ではあるが,欧米の痴呆性を含む施設と在宅ケアを見聞する機会に恵まれてきた。各国独自の社会経済の基に作られたケアのシステムが,わが国のそれと異なるのは当然であるが,いつの場合もわが国と比較しようとして,その基準の置き方にとまどう。システム全体における位置づけとか,ネットワーク機能などという大きなレベルでの比較ばかりでなく,基本的な生活行為への介助のあり方をみても,ほぼ同じ手技をもっているようでいて,どこか違うという印象を受ける時も,適当な言葉を探せないというようないらだちを覚えたりするのである。たとえば,他国で見た老人への介助の流れは,シンプルで,ある秩序を保った自由さがみられる。それは,我我がよく体験するような,ある行為を促すためにする"取り引き"がほとんどみられないといったことなどを見いだした時などに覚える感情でもある。さらに私は,そのような場面を見て,日本とは違って,この国では"甘ったれていては老人をやっていけない"という思いの中で,わが国の老人と比較している自分を見いだしている。いくつかのこのような経験を,どのように整理すればよいのか,その基準をもてないといったことである。
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