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はじめに
近年,専門職業として看護職に対する認識が問題にされるようになった理由の一つには,近年の看護婦不足による社会的要請ということが挙げられる。しかし又,女性がその社会生活の第一歩としての職業を持つ,それも,何か意義のある職業につきたいと考えるようになった現代女性の職業意識が反映していることも理由として挙げられるだろう。そして,人間尊重が唱えられる今日,健康,不健康を問わずすべての人間に働きかける職業である看護の概念の発展と共に,看護婦に対する新たな認識を必要としていることは,単に看護界の問題にとどまらないだろう。社会分業の発達した現在,他の職業への認識は,接近の頻度にもよるが,非常に薄いといわれる。一方,マス-コミュニケーションの発達によって,興味を示せば簡単に情報を得ることも可能になっている。従って,看護学生が看護職を志望し,入学する時点では,看護という職業に対する意識の多くは,一般社会通念を基盤にして,ある程度でき上がっていると考えられる。そして,職業に対する専門的な教育はその専門職業意識の形成と共に,対一般社会通念との心理的葛藤を生じさせることにもなる。しかし,多くの一般社会人は看護婦という人間を通して,看護婦や看護に対する認識評価をしているといわれる。これは看護教育が,看護学生の人格形成と共に,その職業意識の形成にどのような役割を果たしているかという問題として提起される。
看護婦の意識に関する研究は,その複雑な要因を決定することの困難さから,長谷川(1967)の研究以来,あまり発展をみていない。
本研究では看護学生の看護婦意識を有機的,多次元的にとらえると共に,看護教育の影響を職業意識の形成の面から分析を加えることを試みた。
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