解説
看護研究と心理学
乾 孝
1
1法政大学・心理学
pp.193-198
発行日 1969年7月15日
Published Date 1969/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200138
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看護研究にとって,心理学がどんな形で役に立つか,現在の筆者には,はっきりしたイメージがない。最初の企画で課題として与えられた“看護研究のための心理学”を,上記のように改めさせてもらったのもそのためである。それは,筆者が看護研究の問題意識にうといからだけではない。むしろ,戦後急速にジャーナリズムの波にのり,こんにちでは,ほとんどすべての婦人向け週刊誌に,何かの意味で“心理学”的な記事をみるような現状のなかで“心理学”によせられる一般の期待の質が心もとないのである。だから,この小論は,看護研究というようなたいせつな仕事との連関で考察されるとき,とりあえず吟味してかかってほしい諸点を書きならべたものとなるだろう。体系的に“心理学とは…”と書き流すゆとりもないし,また必要もあるまい。しかし,それにしても一応心現学の沿革から話を始めなければなるまい。というのは,戦後,これだけ心理学という名が一般に親しまれながら,心理学といえば精神分析のことだと思ったり,あるいはまた心理学的な研究といえば,大量観察の数量的心理のことと早合点したりする向きが後をたたないからである。そしてまた,高等看護学院の講義を何年かもった経験では,心理学などで,複雑な人間の心のヒダまで探りうるはずはない,人間を数個の型にはめるなどという発想にはがまんができない,という底の素朴な憤懣を残す学生に,必ずといっていいくらい毎年出会うのである。
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