連載 家族社会学・1【新連載】
家族社会学
山根 常男
1
1大阪市立大学家政学部社会福祉学科
pp.7-13
発行日 1969年1月15日
Published Date 1969/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200118
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家族研究の歴史的背景
前 史
家族生活に知的な関心が払われるようになったのは,文明の歴史とともに古い。たとえば古代バビロニヤの法典,古代ヘブライの旧約聖書,古代中国の論語などは,当時の家族生活の法的あるいは倫理的な性格を知るうえに重要な資料を提供している。古代ギリシャではクセノフォンがいまでいう一種の家庭管理論を展開し,またプラトンやアリストテレスは結婚や家族についておのおの独自の見解を示した。古代ローマでは有名なシセロやセネカが結婚や家族の制度を論じ,中世にはアウグスチヌスやトマス=アクィナスなどの神父が,キリスト教の立場から結婚や家族に言及した。そして近世になると,ホッブス・ロック・ルソーなど合理主義的自然法論者といわれる人たちが,一様に社会契約説に立脚しながら,それぞれの立場から結婚や家族を論じた。しかし,これらの人たちの論議は一般的にいって,宗教的,倫理的あるいは哲学的,思弁的で,いまでいう科学的なものとはいえなかった。家族の科学的な研究への試みは,社会科学の他の領域と同じく,やはり19世紀になるのを待たねばならなかった。
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