特集 ライフサイクルと地域保健
家族社会学からみたライフサイクル
山根 常男
1
1大阪市立大学生活科学部家族社会学
pp.694-700
発行日 1976年10月15日
Published Date 1976/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205281
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はじめに
人は家族の中に生まれ,家族の中で育ち,成長すると結婚して自分自身の新しい家族をつくる.そして,この新しい家族の中に生まれた子供は,また親と同じサイクルをくり返す.これが人と家族との関わりの定型的なプロセスである.家族社会学では,人がその中で生まれ育つ家族のことを定位家族(family of orientation)といい,結婚して自分自身がつくる家族のことを生殖家族(family ofprocreation)という.したがって,人は一生涯のあいだに定位家族と生殖家族という2つの家族をもつことになる.
これを個人のライフサイクルという視点からみると,個人は一生涯のあいだに定位家族期と生殖家族期の2つの時期を経験するといえる.もちろん,天涯の孤児や生涯の独身者のように,定位家族や生殖家族をもたない者があり,また親や配偶者との死別や離別のために,定位家族期や生殖家族期が中断される場合があることも事実である.しかし,こうした場合を一応捨象して人の家族過程を定型的にみると,われわれはそこに上記のような2つの時期を確認できるのである.筆者はこれから家族のライフサイクルを論ずるが,それはこうした意味での,定型としての周期的な家族過程であることを,予め断わっておきたい.
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