特集 家族
社会変動と家族
大橋 薫
1
1明治学院大学社会学部
pp.227-235
発行日 1973年4月15日
Published Date 1973/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204647
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わが国の家族は第二次大戦前も,都市化や産業化の進行,そして個人主義思想の芽生えのなかで,いろいろ変化の兆しを示していた.たとえば,自由(恋愛)婚の出現や夫婦家族(conjugal family)の漸増傾向がそれである.終戦時前後にわたって大学生活を送った筆者は,当時このような傾向に対して,わが国に伝統的な直系家族(stem family)こそが,安定した,理想的な家族の姿であり,夫婦家族は個人主義に毒された,不安定な家族である,といつた議論をしていたことを思い出す.
それから20数年たった今は,わが国の家族の変化は大へんなものである.自由婚や夫婦家族は一般化したし,ほかの多くの側面において姿を一変しているのである.これはいうまでもなく家族をとりまく内部的,外部的な諸条件が大きく変化したためである.なかでも,社会制度の改正,高度経済成長,都市化や産業化の急激な進行,生活水準の向上,生活観の変化などが,大きな条件である.それによって,家族はいわば現代的に衣替えをして,プラス面もみられたわけであるが,一方では,数多くの病理が現出して,マイナス面が増大している.
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