解説
看護における事例研究の展開・1
林 滋子
1
1東大医学部保健学科
pp.14-20
発行日 1969年1月15日
Published Date 1969/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200119
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看護の実践の場での中心課題が,看護をする対象に対してできるかぎりよい看護ケアーを提供することにあることは,現在看護の仕事に従事する者の多くの発言や研究報告からみても明らかであるといえよう。そしてこのよい看護ケアーということは,看護の概念の明確化およびそれから導かれる看護ケアーの内容の充実化に伴い,だんだんと明らかにされてきているように見うけられる。看護のもつ意味についての理解を深めながら,対象のもつ看護上の問題を解決していくことは,適切な看護ケアーの計画と,それを行なう看護婦のすぐれた看護の技術のもとになされるであろう。そしてさらに一つ一つの事例をたいせつにし,検討していくことは,後の看護ケアーの向上のために非常に重要なことであろう。そしてこのような意味から,看護における事例研究は現在盛んに行なわれているようである。
ところで,現在なされているいくつかの事例研究(症例研究という名のもとに報告されているものを含む)をみると,非常に情報豊かで克明に記述されてはいても,自己の考えや体験談的なものに終わってしまい,知識との関連が示されない点に一つの欠陥があるのではないかと感じられるものがある。そして,もし知識との関連づけがなされれば,看護における事例研究はより有意義なものに発展するのではないかと考えられる。
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