増刊号特集 1.博士論文を書くということ─あのときの問いといまの問い
保健師としての経験を活かした博士論文
山﨑 恭子
1
1東海大学健康科学部
pp.352-354
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100932
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なぜ博士に進もうと思ったのか
私は企業の保健師として10年間働いてきたが,その間,バブルの崩壊や金融ビッグバンなど,世の中の経済状況が大きく変動する出来事があり,保健活動の対象者である社員にも大きな影響を与えていた。特に私が所属していた企業では大規模なリストラを敢行し,社員の方々が不安を抱えながら働く姿を目の当たりにしていた。さらに,リストラにより人員削減となった職場では残った社員がその穴埋めをするため,仕事の負担が高くなっていた。そのような中で,「社員がメンタルヘルスの不調を起こさずに生きがいをもって働くためには,保健師として何ができるだろうか」ということが,私の日々の課題となっていた。
そこで,社員の心のケアにもっと深く携わりたいと考え,働きながら心理学の大学院に進学し心のケアに必要な知識を取得した。その後,当時の労働省から,心の悩みやストレスを感じる労働者や中高年層の自殺の増加を背景に,「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(2000年)が発表され,企業の中でもメンタルヘルスに対する関心が高まっていった。さらに,2002年に厚生労働省から,近年の医学的検討結果をもとに,疲労の蓄積をもたらす最大の要因である労働時間管理を中心とした「荷重労働による健康障害防止のための総合対策」が公表された。
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