増刊号特集 1.博士論文を書くということ─あのときの問いといまの問い
「学び方を学ぶ」博士後期課程
川名 るり
1
1日本赤十字看護大学
pp.302-305
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100921
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博士論文のテーマが生まれるということ
まず最初に,私の博士論文のテーマがどのように生み出されたのかという話をしたい。博士論文ではオリジナリティが求められるといわれている。博士論文のテーマが見つかる前の私は,来る日も来る日も「研究の問い」がどこかに落ちていないかと探していた。オリジナリティが必要なので,ハードルも高くなる。しかし,一生懸命探しても,「研究の問い」は見つからなかった。
私がそれを見つけたのは,本当に素朴なきっかけだった。その出来事は,研修先の小児病棟で起きた。ある日,私は双子の乳児に対してある同じケアをした。その方法が双子のうち1人へは継続されていき,もう1人へはすぐに途絶えたのである。「その子に合わなかったのかな」「よけいなことをしちゃったかな」と理由を考えたものの,よくわからない。なぜ1人は継続され,もう1人は途絶えたのか。この双子はガラスの壁を挟んで隣の病室にいたので,日勤では別々の看護師が担当していた。「担当が違うからか」「病室が違うからか」「道具がなかったのか」。伝わる,伝わらないということには,方法,人,環境,物など,どのようなことが関係するのだろうか。私にはこの出来事が面白く感じられた。単純に,そして,改めて気になってきたのである。これがきっかけとなり,博士課程での研究活動を開始することにした。
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