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はじめに
1986年4月26日,ソビエト連邦(現ウクライナ)のチェルノブイリ発電所4号炉がメルトダウンにより爆発し,国際原子力事象評価尺度(International Nuclear Event Scale ; INES)において最悪のレベル7に分類された。後に,4号炉をコンクリートで封じ込めるために石棺が造られたが,放射性物質による汚染範囲は,ベラルーシ,ウクライナ,ロシアにまでまたがる。このときの被ばくにより,多くの住民が甲状腺がんに罹患したと報告されている。
今回,弘前大学大学院保健学研究科(以下,本学)の「緊急被ばく医療人材育成プロジェクト」における教員研修の一環として,2012年10月下旬,本学の5名の教員が他部局の教員とともに,ウクライナではチェルノブイリ原子力発電所30km圏内を,ベラルーシでは医療施設および学校等を視察した。
ウクライナ(図1)は,人口約4570万8000人,面積は60.3万km2で,キエフに首都を置く。主要都市は,ハリコフ,ドニエプロペトロフスク,オデッサがあり,今回は,キエフとチェルノブイリを訪れた。公用語はウクライナ語である。キエフは石畳の道や地下道が特徴的で,夜も人通りがあり,賑わいがみられた。
ベラルーシ共和国(図2)は人口約963万4000人,面積は20.7万km2で,ミンスクに首都を置く。今回は,ミンスクとゴメリを訪れた。公用語はベラルーシ語とロシア語であり,ロシア語を多く話しているようであった。広大な平地が続き,雑木林と農地・牧地が印象に残る。ミンスクでは高層で多くの世帯が入居可能な住宅が建ち並んでいた。
本視察の目的および訪問施設は以下の通りであった。
【研修目的】
・チェルノブイリ原発30km圏内の視察
・チェルノブイリ事故後の甲状腺がん発生の現状に関する情報収集
・放射能汚染地域近隣の学校における健康への留意事項に関する情報収集
・ベラルーシおよびウクライナにおける医療および教育関係者との交流
【主な訪問施設】
・チェルノブイリ原子力発電所(ウクライナ)
・チェルノブイリ博物館(ウクライナ:キエフ)
・ミンスク国立甲状腺センター(ベラルーシ:ミンスク)
・国立小児がん,血液学および免疫学科学・応用センター(ベラルーシ:ボロヴリャーニ村)
・国立ゴメリ子どもの家(ベラルーシ:ゴメリ)
・オトール村幼稚園・普通学校教育複合施設および診察所(外来)(ベラルーシ:オトール村)
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