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はじめに
2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災により,青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の各県では,家屋の倒壊や津波,地盤の液状化が発生し,多くの住民が生命や健康を脅かされた。
一方,上記被災地のような甚大な被害を受けなかった関東地方においても,震災発生時には強い揺れが観測され,その後も震度3を超える余震が頻発した。神奈川県内の保育園児に赤ちゃん返りがみられること1)や,「地震酔い」に悩む人が東京都内で増えていること2)が報道されており,被災地以外の住民も影響を受けていると考えられる。
また,今回の震災では福島第一原子力発電所事故(以下,原発事故)が引き起こされ,一部の食品や水道水が放射性物質で汚染された。乳幼児は成人よりも放射性ヨウ素を取り込みやすく,がんに罹患するリスクが高い3)ことから,放射性物質が基準値未満であっても,不安を感じる保護者は少なくないと考えられる。
さらに,原発事故に伴う電力不足対策として行われた計画停電や節電は,日常生活の営みや行政サービスの提供に支障をきたし,妊婦や子どものいる家庭に与える影響は少なくないと考えられる。しかも,日本は世界第3位の原子力発電所保有国であるが4),環太平洋地震帯に位置し,地震活動が活発であるため5),今後,各地で同様の問題が発生する可能性がある。
そこで本調査では,東日本大震災や原発事故で甚大な被害を受けなかった関東地方のA県において,余震,放射能汚染,計画停電,節電などによって母子が感じた不安を,市町村保健センターの保健師がどのようにして把握し,対応してきたのかを明らかにし,大地震発生後に被災地以外の地域で起こりうる母子の不安に対する保健師活動のあり方について,示唆を得ることを目的とした。
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