連載 看護研究の基礎 意義ある研究のためのヒント・第11回
質的研究─分析の基礎―方法崇拝に陥らないために―Qualitative Data Analysis : Preventing Methodolatry
田中 美恵子
1
,
坂下 玲子
2
1東京女子医科大学大学院看護学研究科
2兵庫県立大学看護学部
pp.610-620
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100709
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今回は,代打として登場することになった。編集者から最初に私がいただいたお題は,「質的研究─分析の基礎」であった。浅はかにも執筆を引き受けた当初は,「うん。基礎だから,なんとか書けるだろう」と安易に考えていた。ところが,いざ書こうとすると,「はて,質的研究の分析の“基礎”とは何だろう?」とエラく悩むことになった。
思うに,私が質的研究を修士論文で試みはじめた1988年当時は,日本の看護界に質的研究がようやく紹介,導入されたばかりの頃であった。その頃は,質的研究についての日本語文献は,雑誌に数点あるばかりであった。質的研究について学ぶには,先生に習うか,英語の原著にあたるしかなかった。Straussのグラウンデッド・セオリー・アプローチに関する本など,いくつか購入してみたものの,もちろん十分読解するところまではいかず,結局,わずかな手がかりをもとに,試行錯誤を通して,実際に“質的研究らしきもの”を行なってみるしかなかった。そしてその後に出はじめた翻訳本を読み,「うん。なるほど,確かにこんなプロセスを辿ったな」と,後追い的に,質的研究に内在するいくつかの特徴を再確認したというのが実情である。
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