特集 北欧ケアとは何か 看護研究への示唆
患者に焦点を当てることは生活世界に焦点を当てることである―ケア学というパースペクティヴ
カーリン・ダールベリ
1,2
,
浜渦 辰二
3
,
川崎 唯史
4
1リネウス大学健康とケア学部
2健康・ケア・学習のための生活世界センター
3大阪大学大学院文学研究科
4大阪大学大学院文学研究科修士課程
pp.439-449
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100684
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現代医学はますます,わずかな時代遅れのパターナリズムとともに,高度の専門化と科学技術利用の増進によって特徴づけられている。主要な生命医学上の進歩は,今日のヨーロッパとその影響下にあるいくつかの文化,特に米国において達成されてきた。そのなかで同時に,患者はケアの受動的な受け手になってきている。世界の他の国々と同様に,スウェーデンの患者も,その健康とケアのプロセスに十分に参加してはいない註2。
これに反対する動きとして,いわゆる患者中心のケア(パーソンセンタード・ケア)に大きな期待が寄せられており,「患者自身の選択」が強調されている。患者を参加させるという基本的な考えは結構だが,この動きには同時に問題もある。「患者の選択」という行為者のあり方は,個人と自立という近代的な観念に基づいており,これは実存的な傷つきやすさがあることや,患者が他者とともにある世界に巻き込まれていることとを無視するものである。病いに苦しむ患者は,善と健康をめざした選択をする余裕をもてるほどには自由を経験していないかもしれない。
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