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はじめに
読者の方々のなかには,本誌44巻1号の中山和弘氏の記事(pp.86-93, 2011)をご覧になるまで,ソーシャルメディアという言葉をほとんど聞いたことがなかった方もいらっしゃるかもしれません。しかし,ソーシャルメディアは徐々に日本の社会のなかに浸透しつつあります。本稿の依頼を受け,執筆中の3月はじめ,立ち寄った書店「丸善」でも,ソーシャルメディアに関する書籍の特集が組まれていました(写真)。日常的にコンピュータを利用する研究者であれば,ほとんどの方は,ブログ,ツイッター,ミクシィ,フェイスブックなどソーシャルメディアに含まれるサービスのうち,いくつかの名称は聞いたことはあるのではないでしょうか。
本年3月11日に発生した東日本大震災に際しても,ソーシャルメディアは多くの人によって利用されたようです。野村総合研究所は,震災発生後1週間強が経過した3月19日から3月20日にかけて,関東在住の20~59歳のインターネットユーザー3224名を対象に「東北地方太平洋沖地震に伴うメディア接触動向に関する調査」を行なっています。この調査によると,地震関連の情報で最も重視された情報源は「NHKのテレビ放送(80.5%)」でしたが,「ソーシャルメディアの情報(18.3%,7位)」も,「インターネットの新聞社の情報(18.6%,6位)」と同程度に重視されていたことが示されています。しかし一方で,情報発信主体への信頼度の変化について,「ソーシャルメディアで個人が発信する情報」については,信頼度が上がったとの回答(13.4%)と,下がったとの回答(9.0%)の両方が一定数みられていました。わが国におけるソーシャルメディアの活用の仕方や既存のメディアとの棲み分け,補完関係などは今後の課題といえそうです。
本誌44巻1号では中山氏が,ソーシャルメディアの1つとして急速にユーザーを増やしているツイッターの経験を中心に,国内外の看護研究および保健医療分野でのソーシャルメディアの先進的な使用例を具体的に紹介されています。本稿はその論考を受けて,ソーシャルメディアやマーケティングに関する一般書の記述等を参考にしながら,ソーシャルメディアの普及が看護学領域に及ぼし得る影響について,ソーシャルメディアの特徴を踏まえて考察してみます。
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