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ヒューマン・ケアリングを基軸とするカリキュラム 戸村道子
日本赤十字広島看護大学看護学部(以下,本学)では,教育理念として,生命の尊厳と人類の叡知を基調とした「ヒューマン・ケアリング」を中核に据えて,真の意味でのヒューマン・ケアリングの意味と価値を認識し,柔軟かつ創造的にヒューマン・ケアリングを実践できる看護者の育成をめざしている。ヒューマン・ケアリングとは,具体的には「国籍や民族,宗教や社会的地位を超え,心身を病んだ人々や健康障害をもつ人々の耐えがたい苦痛や苦悩,不安や孤独,怒りや憤りを生活上の援助を通して分かち合い,癒し,そして自己成長や自己実現に向け密接にかかわり,同時に看護師自身も成長する」ことを実践できる能力を育むことにある。
ヒューマン・ケアリングの定義は,理論家・研究者により多様になされている。本学の教育理念にある「ヒューマン・ケアリング」は,Mayeroff(1971/2001)の言う「他者の成長を助けること」,Watson(1988/1992)の唱える,深い関心をもって他者と対峙し,間主観的でかつトランスパーソナルな関係から,患者の心・身体・魂の調和をめざし,現在の自分を統合し成長し,より高い意識へと発展していく,という理論に依拠している。これら抽象度の高い概念を看護教育に活用するため,本学では,上述したような教育理念を掲げている〔ヒューマン・ケアリングを理念にしたカリキュラムの構築についての詳細は,巻末文献にも示した稲岡(2001)を参照されたい〕。さらに,人類史上最初の原子爆弾による大量破壊と,人間の尊厳が脅かされる悲惨な体験を原点に平和を訴えるヒロシマの地で,看護を志す若い世代を対象に,看護教育のなかでヒューマン・ケアリングの意味と価値を深めていく意義は大きい。なおWatson博士の呼びかけにより,本年2011(平成23)年6月18~19日の両日,広島市において「国際ケアリング学会─ケアリングと平和」が開催されることについて付記しておきたい。本学会では,新道幸惠・日本赤十字広島看護大学学長が学会長を,またWatson博士が名誉学会長を務め開催予定である。ヒューマン・ケアリングについて関心のある方はぜひご参加いただきたい(http://apollon.nta.co.jp/ihccp2011/)。
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