焦点 看護学におけるTranslational Research─振動による褥瘡の治療促進をめざした機器開発・検証のプロセス
【ニーズの把握】
寝たきり高齢者の下肢褥瘡発生要因
大桑 麻由美
1
,
須釜 淳子
1,2
,
真田 弘美
3
,
大江 真琴
4
1金沢大学医薬保健研究域保健学系臨床実践看護学講座
2東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻アドバンストスキンケア(ミスパリ)寄附講座
3東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
4東京大学大学院医学系研究科ライフサポート技術開発学(モルテン)寄附講座
キーワード:
下肢褥瘡
,
ABI
,
Ankle Brachial Index
,
発生要因
Keyword:
下肢褥瘡
,
ABI
,
Ankle Brachial Index
,
発生要因
pp.447-452
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100471
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ニーズを把握する
褥瘡の定義は,「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下,あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる」とされ(日本褥瘡学会,2005),褥瘡保有患者の多くは,活動性・可動性が低下した高齢者である。つまり,寝たきり高齢者に多い病態であり,問題となっていた。わが国では,2002(平成14)年に褥瘡対策未実施減算が実施されたことで褥瘡予防ケアの整備が進み,特に体圧分散寝具が拡充した。その結果,療養型病院での褥瘡有病率は実施前7.3%から実施後6.4%と有意に減少に転じた(日本褥瘡学会調査委員会,2006)。しかし数は減少しても治癒困難な褥瘡は存在し,踵部などの足部・下肢によく観察された。
臨床で行なわれている体圧分散ケアとして,体圧分散寝具を使用し体位変換を行なうこと,また,踵部の圧迫を除去するために踵部を浮かすことがあげられる。冒頭述べたように褥瘡の第一原因は圧迫であり,この原因を排除する体圧分散ケアを実施することで,褥瘡予防や,治癒促進ができるはずである。しかし,このような基本的な体圧分散ケアを実施しているにもかかわらず,下肢の褥瘡はなお発生かつ重症化し,そして治癒遅延している状況を呈していた。
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