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シーズを見いだす
高齢者の下肢褥瘡発生のリスクファクターが血流低下であることが疫学調査によって明らかになった。従来から,褥瘡予防に使用される体圧分散寝具の使用により血流を確保することが治癒環境のベースとなっていたが,このような疫学データをもとに,看護ケア戦略として積極的に血流を改善させる方法こそ,褥瘡の管理に極めて有効であることが推察された。しかし,血流を増加させるような非侵襲的な技術・手法については研究が限られていた。血流を増加させる方法としては,血管拡張剤の投与や血行再建など直接的,かつ大きな効果の期待できる方法がある。
しかしながら,高齢者のQOLという視点に立つと,それらの価値はどうであろうか。点滴につながれ,さまざまな合併症の危険性をもってまで受ける治療は,高齢者の褥瘡予防のためにベストの方法といえるであろうか。看護学がめざすところは,最大限患者の苦痛を取り除き,めざすべき健康状態に患者を押し上げる手助けをすることである。リスクとベネフィットを天秤にかけた際,必ずしも効果の高い方法が選択されるとは限らない。しかも予防的な目的での使用はかなり限定されるはずであり,現行の医療制度の問題からも,適応はかなり困難である。特に血行再建術などには,血管外科医との連携が必要となるが,チーム医療の充実が不十分で,そうした医療行為が適切に行なえないことも現場では少なからずある。そして,高齢者に対してどこまで積極的な医療を提供するのかという,日本が抱える大きな問題もその背景に存在している。これらの状況から,われわれはより非侵襲的であり,しかも患者が心地よいと感じることのできる方法,つまり,リスクが極めて小さく,かつ侵襲的な方法と同等とまではいかないまでも大きなベネフィットを得られるような技術を探し求めた。
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