- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
EBP実行のための概念モデルとして,前号ではTRIP(translating research into practice intervention)介入モデルを紹介した。このモデルはEBPの実践者だけではなく,組織全体の変革,すなわちEBPの普及と継続をめざしてEBP文化の形成までをも視野に入れた「組織的介入モデル」であった。これに対し,本稿では,臨床の実践者が主体となってEBP実行(implementation)を推進していくためのモデルとして「実践者主導モデル」の例を紹介する。
「実践者主導モデル」の特徴は,実践者が主体となって臨床現場で直面しているEBP課題を取り上げ,それを具体的なステップに基づいて課題解決をしていくという点にある。その共通要素としては,実践トピックの選択,エビデンスの批判的吟味と統合,実行,患者ケアと実践者による履行の評価,状況や背景の考察があげられる(Titler, 2008)。すなわち「実践者主導モデル」は,問題解決過程に沿ったEBPの実践ステップを示しているものといえよう。ここでは「実践者主導モデル」として,IOWAモデル(Titler, et al., 2001)とAHRQモデル(Nieva, et al., 2005)の2つを筆者なりにまとめながら紹介する(使用許諾済み)。そのため,これらの概念モデルの詳細な内容に関しては,それぞれの原典にあたって確認してもらいたい。
ただ,これら「実践者主導モデル」においても,EBP実行を組織的により広く普及していくためには,多様な実践者やシステムを組み入れた多面的なアプローチが求められる。つまり,前号で紹介したTRIP介入モデルに代表されるような,多層的・組織的な介入が必要となるのである。EBP実行を促進していくためには,「組織的介入モデル」と「実践者主導モデル」の双方のモデルを念頭においた上で,それぞれの組織や状況に応じて最適な方略を採用していくことが求められるだろう。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.