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はじめに
看護学は実践の学問であり,科学としての看護と職業としての看護の両方が包括される。つまり,看護学を,技術習得を目的とした単なる職業訓練ではなく,専門職としての学問と位置づけるには,その実践は,根拠が明確で信頼のできる知識体系に基づいていることが重要である。Walker & Avant(2005/中木・川﨑訳,2008)は「理論開発や研究,反省的実践によって看護特有の知識体系の土台を開発することは,看護を医学の従属的職業から健康関連職種間でのパートナーシップへ移行する基礎となった」(p.5)と述べ,看護学という学問領域の発展における理論開発の重要性について指摘している。
理論は,その説明や予測・指示などの機能から,専門的知識である看護知識の統合として,実践の確固たる基礎になり,看護という職業の目標に到達するための主要な手段となる(Chinn & Kramer,1995/白石監訳,1997 ; Walker & Avant,2005/中木・川﨑訳,2008 ; Meleis,2005)。しかしながら,特に看護大理論の検討においてであるが,臨床の実践での具体的な指示を求めるあまり,理論は役に立たないという固定観念が強調されてきたことも事実であり,理論と実践とのギャップを埋める必要性についても力説されている(Benner & Wrubel,1989 ; Chinn & Kramer,1995/白石監訳,1997)。
中範囲理論は研究や実践と直接的に結びつくため,その発展は看護知識全体の発展を表わす指標となる(Smith,2008)。今後,日本の看護学においても中範囲理論を構築し検証していくためには,看護知識の構造とその構造における中範囲理論および実践の位置づけを明確に把握する必要がある。看護の学問ならびに知識構造については,多くの看護研究者によって示されているが,筆者らは,Chinn & Kramer(1995/白石監訳,1997),Crotty(1998),Fawcett(1993,2000,1993/太田・筒井監訳,2008),Higgins & Moore(2000),Kim(1989),Smith & Liehr(2008),そしてWalker & Avant(1995,2005/中木・川﨑訳,2008)を参考にし,実践を含めた看護における知識構造についてモデル作成を試みたので,提案したい(図)。
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