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Walker & Avantによる『Strategies for Theory Construction in Nursing』(4th ed., 2005)が,中木・川﨑により翻訳され,2008(平成20)年に『看護における理論構築の方法』(医学書院)として出版された。昨今,看護界において「中範囲理論」に対する注目がさらに高まりつつある。看護や,看護に関連する専門科学領域に現存する中範囲理論を詳細に批評・検討し,理論調査の方法について理解を深め,看護の中範囲理論の開発を試みることは,看護学術領域の知識の構築・発展に寄与する重要な研究活動の1つである。
理論の基本構成要素は概念であり,概念は理論構築の基盤となるものである(Walker & Avant,2005/中木・川﨑訳,2008)。そして理論とは,いくつかの概念が積み木のように組み立てられて成り立っている。概念そのものは目に見えるものではなく,イメージとして抽象化された現象やアクションであるため,言葉でそのイメージを表現する必要がある。その言葉による表現を追求することで,概念がより明確化されるのである。概念の基本構成要素について吟味するプロセスが,概念分析である。概念分析によって,追求する概念がより明確に説明できたり限定できたりする。看護実践において不明確な概念が明確化されれば,誰もが同じイメージをもつことができるようになる。これは研究においても重要な点であり,いくつかの概念の関係をもとに仮説を立てたり,ツール開発やインタビューガイド作成にも有効に活用できる(Walker & Avant,2005/中木・川﨑訳,2008)。よって,看護における理論開発の主たる目的は,臨床の看護師が,より完全で洞察力に富んだ形で実践を理解するのを助け(Walker & Avant/中木・川﨑訳,2008),中範囲理論で特定されている予測的な看護実践や介入を経験的に検証することである(Fawcett,2000)。そして理論は看護専門的知識の統合として,看護実践のより完全な姿を提供することになる(Walker & Avant,2005/中木・川﨑訳,2008)。
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