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はじめに
ストレッサーとしての病いと対処資源としての看護
人々が病いを抱え,それと向き合い,治療し,克服,あるいは受容してうまく付き合っていけるようになる過程において,多くの場合,その人の周囲の資源(外的資源),あるいはその人自身の内にあるさまざまな資源(内的資源)が動員され,対処していくことになる。
その資源とは,さまざまな医療職者,あるいは医療機関そのもの,家族や友人たち,そしてお金や社会経済的地位もあるかもしれない。さらには,自分自身の免疫力や身体的機能,性格も動員することになるかもしれない。ここで,「病いを抱え,それと向き合い,治療し」という過程は,患者自身にとって,いわゆるストレッサーのひとつにもなりうる。また,Antonovskyの健康生成モデル(Antonovsky,1979;山崎・戸ヶ里・坂野編,2008)では,こうした対処資源のことを「汎抵抗資源」(generalized resistance resources ; GRRs)と呼んでいる。したがって看護の存在自体は,病院内における患者にとっての有力な「汎抵抗資源」の1つであるといえる。
汎抵抗資源とは,「ストレッサーの回避や処理に役立つ,世のなかにあまねく存在するもの」と定義されている(Antonovsky,1979)。例としては,遺伝的素因,神経免疫学的要因に始まってカネ,住居,地位,権力,知識,社会関係など,多岐にわたってあげられている。人がストレッサーに直面したときには,こうした汎抵抗資源を用いて,ストレッサーをうまく処理していくことになる。なかでも病院に入院した患者は病気,治療あるいは療養生活という大きなストレッサーとともに生活していくこととなり,当然のようにこうしたストレッサーをうまく処理していかねばならない。その際に看護師は,医学・生物学的なモニタリングに加え,患者の情報的,手段的,情緒的なサポート源として,また,医療関係職種のコーディネートや患者と医師,コメディカルの間の連絡調整など,多岐にわたる看護業務を通じて,患者のストレッサー処理に大きく役立つことになる。
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