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はじめに
筆者は,1971年から1991年まで20年間,KJ法の創案者である川喜田二郎理学博士(東京工業大学名誉教授)が当時主宰していた研究所に在籍し,KJ法の研究と普及に従事した。その後,「質的統合法(KJ法)」の名称のもと,筆者流に理論と技術の両面から探求を深めながら,これを用いて実践的な問題解決を産業界や地域,大学で展開してきている。
「KJ法」が,川喜田二郎理学博士の頭文字をとって命名されていることはつとに有名である。KJ法が普及して産業界に広がるなか,創案者の私設研究機関である川喜田研究所の登録商標が確立している。今回紹介する「質的統合法(KJ法)」の命名に関しては,すでに登録商標となっている「KJ法」との混同を避け,研究所ならびに第三者に迷惑を生じさせないために,かつ筆者の経歴からその出典を明らかにして創案者を尊重したい主旨から,「質的統合法(KJ法)」という,機能名称と出典表示名称を併記する方式をとっている。その後実践の場で探求を進めた結果,川喜田学の門下生として学んだ内容が筆者流の内容に変化していることもあり,ここで紹介する内容は原典の「KJ法」とは異なってしまっていることを先にお断りしておく。
質的統合法(KJ法)を基礎とした質的研究法開発の経緯は,佐藤禮子・現兵庫医療大学副学長が千葉大学教授・看護学部長をつとめられていた当時にさかのぼる。1996年5月,佐藤教授からの依頼で千葉大学大学院生の自主研修会で論文作成のための質的統合法(KJ法)の指導を行なったことが,筆者が看護学分野において質的研究法の開発に関わり始めた発端となっている。その後,1998年1月から毎年1~2回の頻度で行なわれる研修会として現在まで継続している。
このような経緯のなかで,正木治恵・千葉大学看護学部教授と共同して「質的統合法(KJ法)」を用いた質的研究実践を積み上げてきている。本稿では,質的研究の基礎をなす実態把握法である「質的統合法(KJ法)」と,従来より方法論として見落とされてきた「考察」を進める上での技術である「コスモス法」について,その全体像を理論と技術の観点から紹介したい。
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