連載 いま知っておきたい環境問題・21[最終回]
人口問題と環境の接点へのアプローチ
林 謙治
1
1国立公衆衛生院保健統計人口学部
pp.126-131
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902992
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人口は社会が成立するもっとも基本的な条件であるので,健康問題のみならず社会のあらゆるできごとに関連している。最近人口問題が地球環境にどのような影響を与えるかについて研究が活発になってきているが,新しい研究分野だけに全体像は必ずしも満足には描かれていない。そこで本稿では具体的な結果よりもどのように研究が進められているかを中心に,なるべく平易に解説したい。
そもそも人口問題の社会影響を取り上げたのはイギリスの経済学者マルサスである。彼の説によれば食料の生産は算術級数的に増加するが,人口は幾何級数的に増えるという。そのためにやがて人々は飢えに苦しみ,社会的に大きな混乱を来すであろうと予測した。これを避ける方法は,戦争は別として晩婚あるいは禁欲を実行し,出生を抑制しなければならないと主張した。実際,人口問題が注目されはじめたのは第2次大戦後であり,特にインドやパキスタンなどの飢饉問題が直接的な引き金となっている。
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